おそらく俺よりずっと年下な気がする少年は、小馬鹿にしたようにそう言った。
それとも――あるいは何かの罰なんだろうか。
いつも胸にある得体の知れない恐怖。
俺は前世で何かとんでもない罪を犯して、だからこんなわけのわからない目にあうんだろうか。
――と、その時突風が吹いて俺は思わず腕で顔をかばった。
ここは、どこなんだ?少なくともかなりの高さのある時計台の上層階に俺はいるようだ。
こんな時計台がある街を俺は知らない。
そして――その風にまぎれて――何か――女性の悲鳴のようなものが耳に届いてきた。
展望台の柵に手をかけ、下を見下ろす。眼下にはさらに広い庭園のような階層が広がっていた。
この時計台はかなり巨大な建造物らしい。
同時に目に飛び込んで来たのは……
「――っ!はは……いや、どう見たって夢だろこれ……」
四つん這いで蜘蛛のように奇妙な動きをしながら走る人間の群れ。
そして……それに追いかけられているのは……少女?
木刀を持った少女のようだった。
剣道部か何かなのだろうか。いわゆる剣道着って言われている服を着ているようだ。
そしてよく見ると……蜘蛛人間達の首から上は……目がたくさん生えている吐き気を覚えるような姿だった。いや、もはや蜘蛛そのものの怪物もいる。
グロテスクな化け物に追い掛けられる剣道少女。これは本当に……まるで……夢……いや……”あのゲーム”そのものだ。
【アレは”群衆者”って呼ばれてる者達みたいだね】
「ぐん……しゅう、しゃ……?」
【そう。一人一人の攻撃力は大した事ないらしいけど、集団で襲われるとやっかいだ。さて、あの女の人を助けるなら――】
――は?何言ってるんだ。
「――助けるって――なんで?」
【……え……?】
「冗談よせよ。こんなわけわからない場所にいきなり来て、しかもどんな仕組みか知らないけど頭の中に音声が響いて。それでいきなり誰かを助けるだとか何とか……そんな思考になるわけないだろ。100無いって」
【……放っておくとあの女の人は死ぬかもしれないのに?】
「そんなの俺のせいでも何でもないだろ」
【はぁ……最悪だな。よりによってこんな奴の担当者になるだなんて……】
――言葉通りの意味で言うが、知った事かよ――
「それにあの子が俺に助けてって言ってるわけでもないし……そもそも、俺の事にも気づいてないだろうし」
【いや、それは――】
ボイスが何かを言いかけるより先に、なんとその少女がこちらを見上げ――俺とバッチリ目が合った。
「……へ……ヘールプぅ!!ヘルプッ!!」
おかしな蜘蛛人間を木刀で牽制しながら叫んだ彼女の声は……間違いなく耳に届いてしまった。