【――と、いう事らしいけど?】
「……いや、だとしてもこの距離であんなの相手に俺が何できるってんだよ……」
【さっきの説明の続きだけど、君達にはそれぞれ特性にあった武器が1つずつ与えられている。君は銃みたいだな、オトウノリヨシ。その腰に装着された銃を使えばいい】
「――え――」
そう言われてパーカーの下をまさぐり気づいた。確かに腰にホルスターが装着されていて、銃がぶら下がっている。
しかも――この銃は――
【M686皇夜カスタム……と、資料に書いてある】
「そんな……ゲームの中の銃がなんで……」
【そんな事より――助けるなら、早くしないとマズいんじゃない?】
「……いや……撃って当たったら死ぬじゃないか。殺人は……」
【ちなみにあの群衆者はもう人間じゃない。まぁ、それでも元人間だし、見た目が人間に近い奴もいるから迷う気持ちは分かるけどね。ただ、グズグズしていると――】
――は?人間じゃないのか。だったら――問題ないじゃないか――
俺はホルスターから銃を引き抜くと少女に一番近づいている蜘蛛人間に撃った。
初弾の命中を確認してから続けざまに撃ち続け、駆逐していく。
なるほど、確かに人間ではないようだ。血の色が気味の悪い黒さだし、倒れた後に身体がバラバラに崩れていく。
【……なんで突然そんな思い切りがいいんだ。なんというか……切り替えが速すぎて気持ち悪い】
「何言ってんだよ、やれって言っといて……おぉーい!あ、あんた!!もっとこっちに来いよ!こっちの横に階段がある!ここまで上がって来いよ!」
少女に呼びかけると、伝わったようだ。
囲みを切り抜けてこちらに走り出した。
それを追いかけようとする蜘蛛人間をことごとく撃ち倒していく。
【……めちゃくちゃ射撃上手いじゃん……なんだよ……】
脳内でボイスがなぜか不満そうな声を上げていたが、正直それほどの話でもなかった。
発射されているのは現実世界の弾丸じゃない。そもそも訓練も受けていない一般人の俺がいきなり本物の銃とか撃ったらたぶん反動で手を痛めてまともに撃てない。
敵に一直線に伸びていく光線。
その光線に撃ち倒されていく敵。
ゲームの中でしか見られなかった光景が眼前に広がっていた。
そう、つまり俺が”得意なあのゲーム”の感覚そのままで銃を撃ち、それが通用しているってだけだ。
それに、むしろ俺よりあの少女――
「いや、あの子のほうが……バケモンだろ……」
少女は指で方向を示し、俺に「援護射撃をさせる場所」を指示してきた。
そして彼女自身も木刀を振るい、蜘蛛人間を撃退していく。
その動きは人間離れした速度で――気を抜くと見とれて銃を撃つ手が止まってしまいそうだ。
少女が階段を駆け上がり、俺の場所まで到達した頃――すでに蜘蛛人間は一体残らず崩れさっていた。
「はぁ……はぁ……」
肩で息をしながら駆け寄ってきた少女は……真っ直ぐに俺を見つめ……そして――ボディブローを放ってきた。