「えっと……ごめん。あ……俺、そうか……それと……ありがとう。なんか、たぶん君のおかげで助かった」
「いいよーヨッシー。あたしも助けてもらったし!チャラって事で!」
「え……ヨッシーって……」
「オトウノリヨシっていうのも長いじゃん!嫌だったらノリリン?オトゥー!ってのもいいかとは思うけど」
「あ……いや……ヨッシーで……いいや」
何か引きつった笑いでヨッシーが返す。どうやらあまりノリは良くない。
うん、やっぱりノリリンよりヨッシーかな。
「オッケー!ヨッシー!よろしくね。あたしは白木こたつ。白いに木材の木にひらがなでこたつ。こたつでいいよ。なんとなくあたしのほうが年下っぽいし。あたし高二なんだけど……ヨッシーって高校生っぽくないよね」
「あぁ……俺は大学一年。なんだ……普通に女子高生で安心した……って!!何?!なんでいきなり脱ぎ始めてんの!?!?」
袴を脱ぎ始めたあたしにヨッシーが慌てふためいて顔を手で覆う。
なんというか……大学一年にしては、少し純に過ぎる反応だなぁ。
「いやガラス片がたくさん付いちゃったし、破けちゃったし……何より走りにくいんだよね。上の胴着は長いからちゃんとヒザまであるし……下はスパッツだから、まぁいいんじゃん?」
そう……格好なんて気にしてる場合じゃないのは確かだ。
コレはそんな甘い儀式じゃない。
命がけ……くらいじゃ到底追いつかない。それほどのものだ。
【あ、あの……でも……生足見えちゃうし……なんか……えっちですよね……】
ふと……特徴的なキーの高い女の子の声が脳内に響いた。さっきのボイスって子と同じく……たぶん、小学生くらい……の声に聞こえる。
そうか……この子が……。
「……はじめまして。君が、あたしの担当者……?」
【は、はい……】
あたしは穴が空き、風が吹き込む窓に近づくと外を確認した。
さっきまでいた時計台を見上げる。
柵の場所には誰もいない。
「ふぅ……ひとまず状況確認するくらいの余裕はありそうかな」
「……ああ」
同じく辺りの様子をうかがっていたヨッシーが応じる。「なんかどっかの会社のオフィス……って感じだけど、この騒ぎでも誰も来る気配がない。普通警備員とか巡回してそうなのに」
……この25時の世界に普通の警備員なんて存在するわけない。
どうやらヨッシーは本当にそのへんの事情を知らない人のようだ。
そんな参加者もいるなんて。
「ヨッシーってなんか”一般人”って感じだけど……”一般人”が来るはず無いんだよねぇ……」
「え……?な、なにそれ……?」
「うーん……さっきのチュートリアル……だっけ?アレもかなり中途半端な感じだったし……ここはちょいとしっかりめに説明してあげたほうが良いんじゃないかな?担当者さん?」
【あ……はい……】
「じゃあ、とりあえず名前から。あたしの担当者さんは誰さん?」