「――でね。このツクモの使い方とかもウチの先祖が25時の世界に関わった時に教わったものらしいんだよね。で……25時の世界への入り方も一緒に伝わってて……あたしは、その儀式をしてこの世界に来たってわけ」
ビルの廊下を歩きながら、あたしはヨッシーに説明を続ける。
ヨッシーは飲みこみきれない表情をしていたが……渋々という感じでため息をついた。
「漫画そのものって感じだけど……実際こんなとこに来てるしなぁ……」
でも――と続ける。「この25時の世界ってのは結局なんなんだ?担当者って……なんか運営者側っぽいネーミングだけど……こいつらが主催のイベントって事?」
「さぁ……そのへんはあたしもよく知らないんだよね。あたしが聞いてたのは……25時の世界では時間制限付きの戦いがあって……そこで勝てたら願いが叶う……って話だけ。あと舞台?とかもその時々で違うとかなんとか……。ここはなんだか現代社会っぽい世界に見えるけど……場所とか含めて誰かが作ってるのかな?そのへんどうなのイズちゃん?」
【え……あの……す、すみません。あたしはよく知りません。それに……自分の事は言うなって……言われてて……】
急に振られて驚いたのか、戸惑ったかすれ声が返ってきた。
嘘はあまり言ってないけど、色々喋れない事がある……って感じかな。
【た、ただ……その世界にいる人達は……ベヴォーナーって呼ばれてる人達だと聞いてます】
「ベ……ボーナー?」
【えっと……この25時の世界の事を知っていて……それで自分の行動……ひ……む……?えっと、自分のため?に行動する人達だって……】
「――ベヴォーナーの話かい?つまり――わしらぁ、あんた達シャウシュウピーラーの敵にも味方にもなるっちゅー事よ。なぁ、お前達?」
「……下がって、ヨッシー」
あたしは左手でヨッシーを手で止めると、右手の又三郎を構え直した。
薄暗い廊下の先から……何人かがこちらへ歩いてくる。
それはどうやらわりと歳のいったおじさん達……なんかテレビでよく見る「俺達、全力で反社会的でーす!」みたいな人達のようだった。
先頭を歩いてきたオールバックの男がひらひらと手をふる。
全員が黒のスーツで……夜なのに黒のサングラス。……なんかこう……この手の人達ってとにかく暗い色合い好きだよね。
「……まぁ、ごくごくあったり前の話なんよ。あんたらの誰かがこの愉快なゲームで勝つ。するとそれに協力した者にもその”おこぼれ”がもらえる。何でも叶うってぇ賞品のおこぼれなんじゃけえ。そりゃ張り切るわいや。のう?」
男が後ろに振り返りながら男達に問いかける。背後の男達は無言でうなずいた。
なるほど――”賞品”の事を知っているなら――それはごく自然な話かもしれない。
「じゃあ……おじ様達は……あたし達の味方してくれるって事?」
――正直――味方になってほしいタイプじゃないけどなぁ。
「おじ様って呼ばれるのも悪くはないが――まぁ名前で呼んでもらおうかい。わしらは盲羅<モウラ>。全員同じく盲羅。じゃけえ、わしらの誰を呼ぶ時も盲羅でええよ」
盲羅と名乗った男は唇をなめながらニヤニヤ笑いながらこっちを見てくる。「それに――味方になるかどうかはまだ分からん」
「……それは……どういう事かな?」
「――は?そんなの100決まってるじゃん」