不意に横にいたヨッシーが声を上げた。「だって……”勝つ”奴につかなきゃ意味ないんだし。逆に勝ちそうにもない奴は殺したほうが得だろ。その貢献を”勝つ”奴に認められたらおこぼれもらえる可能性上がるし」
「……なるほど……って思うけど……それ……今この状況で言うべき事だったの……かなー……」
ヨッシーが「あ」という顔をする。この人……なんか鋭いんだか抜けてるんだかよく分からない人だ。
「その兄ちゃんの言うとおり。わしらはこの世界をそういった駆け引きで動きよる。あんたらをイグラムールの連中が襲ったのも見とったよ。アレがあいつらのやり方じゃけえの」
「イグラムール……って、さっきの蜘蛛人間?やり方って……なんでいきなり襲ってくるの?いきなりすぎてちょいヤバだったんですけど!」
いきなりあんな襲われ方したら、流石のあたしでもテンパる。
「あいつらは単体じゃ弱い。じゃけえ……不意をついて感染させようとするんじゃ」
――感――染――?
「あいつらの誰かに身体のどこかを噛まれたら、そこから毒が回って感染する。で……時間と共に噛まれた者もあいつらの一人になる。じゃけえあいつらは<群衆者>とか呼ばれとるんじゃいや。そうなったらもうどうしようもないけえの。じゃけえ……わしらは確認に来たんじゃ。のう?」
オールバックの盲羅は眼を細めながら――真っ直ぐにあたしを見る。その視線は、まるで全身にまとわりつくような粘り気を感じさせた。
――え――でも――噛まれたらアウトって――それ――
【ひ……こ、こたつさん……その左手……】
頭の中に――怯えたイズちゃんの声が響いた。
あたしは左手を上げ――その手の平の部分をじっと見る。
……小指の付け根の下……手首に向かって……歯形状の傷と……そこから不気味な青紫のアザが……広がっていた。
「あ……あーははー……さっき……噛まれちゃってたよーん……」
「え……」
ヨッシーが目を見開いて絶句し、オールバック盲羅がアゴに手をやって思案顔になった。
「あー……やっぱダメじゃったかいやー……。ほいたら……どうしようかいのぅ……」
「いやいやー……でも、ホラ。あたし昔っからなんとなく運は強いし……たぶん、なんとかなるんじゃん?」
「なるかいアホぅ」
間髪入れずにオールバック盲羅はツッコミ入れてきた。傷心の女の子をいたわる心とかないのか。
絶対モテない奴だ、こいつ……と、あたしが思った瞬間。
――パン! そんな乾いた音がやけに非現実的に響いた。
「あ……つ……っ」
【こたつさん!!!】
撃たれた。
いつの間に取り出したのか。オールバックの手に握られた銃から微かな硝煙が立ち昇る。