第2章

第2章2ページ「Argumentation」

「そうだよ。例えば――私にはすでに以下の事が推理で分かっている。まず――」

 

私は自分の人差し指をゆっくりと立ててゆるやかに円を描いてみせた。

 

「――この街が円形にゆっくりと中心に向かって崩壊していってるという事。これは最初にボイス君が説明していたね。何の事か分からなかったから、このビルの屋上に行ってじっくり観察してみた。驚いたよ。一体どんな仕掛けか分からないけど……ある一定の場所から先が”無い”。何も無くなっている。まるで、そこに目を向けたら盲目になってしまったように」

 

そして、その円は徐々に内側に狭まっている。正確なところは分からないが……おそらく、その円が完全に閉じるまで半日とかからない。

 

【…………】

 

「次に、この街の状況。どうやらこの街には大きく分けて3つのグループがいて……その3つのグループがそれぞれ”おこぼれ”とやらを狙って争っているようだ。1つ目は冒頭で阿籐君達が遭遇したイグラムール。そして2つ目がその次に阿籐君達と接触した盲羅という者達。そして3つ目が――済手<サイデ>と呼ばれる……なんだろうな?宗教団体のようなもの……かな」

 

【すご……そうなんだ……どうしてそんな事分かるの?】

 

「うん、探偵アラタが君に教えよう。いいかい……『なんか嫌な奴は、とりあえず殴る』――だ」

【……へ……?】

 

私は歩く。カツカツと革靴の音が立体駐車場にこだましていた。

 

そして――車の影に倒れ込んでいる男を指さしてみせる。

 

「私にモニタリングってのが回ってくるまで39分かかったんでね。その間、色々と動き回っていたら――例の盲羅って集団の一人が私を見張っているのに気づいたのさ。で――とりあえず悪そうな奴だったんで遠慮無くぶちのめして情報を聞き出した。……ってわけ。

ただし残念ながら阿藤君達がどこに連れて行かれたかは知らないようだ」

 

【……推理じゃないじゃん】

 

「謎なんてとりあえず殴ればたいてい解けるのだよ」

 

【いや、そんな方針の探偵聞いたことないから……】

 

「じゃあ今日知り合えて良かった。そして、それらのグループに属さない人達も少数ながらこの世界には存在していて……その人達は、協定で定められた中立地帯の場所に大体集まっている」

 

【へぇ……】

 

「その中立地帯で最も大きなものが〈無法のカクテル〉って名前のBARらしい。

場所の探し方も簡単だ。その中立地帯はなるべくこのゲームの最後まで存在しないといけないだろうからね。

必然的に……この街の中心にある一番大きなビル……その中って事になる。

ま、ここがそのビルなんだけど」

 

そして私は芝居っ気たっぷりにビル内部へ続く駐車場の出口へと右手を広げた。

 

「――で、今から私がそのBARに行くわけさ」

 

【やたら説明口調なのも何か意味あるの?】

 

――うん、この子は賢い。

 

「もちろん。だってこのモニタリングとやらはモニターの人全員に見えてるんだろう?

だったら情報のシェアは有意義なはずだ。

いや……もっと簡単に言うと“お誘い”さ。

今から私がそのBARに行くから来ないかい?ってね」

 

【……まだどんな人達かも分からないのに?】

 

「探偵アラタが君に教えよう。『よく分からなかったらとりあえずかき回してみる』のさ。みそ汁もカレーもよくかき混ぜないと味が分からないだろう?」

 

【“とりあえず”ばっかりじゃん……】

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