このモニタリングはモニター全員が見ている。
1巡して回って来た事を考えると、どうやらモニターと呼ばれる私達は全員で5人の可能性が高い。
私達と阿籐君達は協力し合えるだろう。
問題は、あの転生鳴浪という、よく分からない子……。
魔法使い、だったか。
……いよいよファンタジーって感じだが、実際そんな人間がいるならいるとして考えるしかない。
何やら不穏な発言もしていたが――この局面ではどう行動してくるんだろう?
話し合う事さえできたら……味方になってもらえるんだろうか。
いや、今はむしろ刺激しないほうが良いのかもしれない。
それに――この“逢”という儀式のご褒美は「なんでも叶えてもらえる」という猫型ロボットもビックリの景品だ。
本当にそんなものがあるのかどうかはともかく、展開次第では私達もどんな心理状況になるか分からない。
そして――さらに分からないのが『担当者』と名乗る子供達の事。
どんな理由で、どんな立場としてこの儀式に参加しているのか。いや……ここまでの言動を見るに『参加させられている』んだと思う。
もし、何か危険な状況にあるのなら、助けてあげたいが……この子達を助けるには……どう行動したら良いんだろう。
……少し危険かもしれないが……やはり私はその質問をする事にした。
「レコード、1つ教えてくれないか。私達モニターの誰かがこの“逢”って儀式で勝者になったら君達はどうなるんだ?何かお手当でももらえるのか?」
【……あたし達は……モニターの誰が勝者になっても、お願いを叶えてもらえるの。ただし、条件が2つあって。1つはアラタ達にこっちの情報を何も伝えない事。もう1つは……どんな事になっても、最後までこのモニタリングを見続ける事。そう言われてる。だから……言えるのはここまでだよ】
……誰が勝者になってもお願いを叶えてもらえる……?
では、この儀式は……そもそも誰が何のために『何のメリットがあって』実施されているのだろう。
それとも……その考え方自体が何か根本的に間違っているのか?
「ごめん、もう1つ教えてくれ。君達に……なんていうか……ペナルティ……ってのは言い方難しいか?あー……何か罰とか与えられる事はあるのかい?」
【ペナルティで分かるよ。さっき言った条件を破ったら何か怒られるかもしれないけど……それ以外は特に何も無い。心配してくれてるんだ?アラタは優しいよね】
「別に私が特別優しいわけではないさ。常識ある大人なら子供を気遣うもんだ」
【……あたしだって……】
「ん?」
【……なんでもない】
「なんでもないって――」
「会話中にすまないが……急がなくていいのか?確か先ほど盲羅とやらは『すぐに来い』と言っていたようだが――」
ユーダイは、やはり“かけひき”などができるタイプじゃないように思う。しかし、それは美徳でもあるんだろう。ズルい大人は私がいれば充分だ。「大丈夫だよ」と私はユーダイに返した。
「アレはこちらに準備をさせないためのプレッシャーさ。大体私達がどこから来るかも分からないんだから、どれだけ時間がかかっても文句のつけようがない」
「そうか。だが――ここからは今すぐ離れたほうがいいようだ。全員で」
「え?そりゃあ……なんでだい?」
驚いて聞き返すとユーダイは「気配だ」と言った。