「俺は……光なんてあてられたって……さっきだって……ただビビってただけだし」
「……本当にビビってるの?」
「――え?」
ヨッシーは驚いた顔をして、こっちを見た。
「いや……なんとなくなんだけどさ。ヨッシーって……なんか表面上ビビってるようでいて……なんか心の底からはビビってなさそうというか……突然凄い事言い出したりするし、あはは」
「……意味分かんないだろうと思うけど……なんか、昔からよく分からない……上手く説明できない……“得体の知れない恐怖”みたいなものがあって……それから逃げられないんだ。それがあるから……俺は上手く現実に溶け込めない。
いつも何かズレてしまう。それがあるから……どんな状況になっても……イマイチ現実感が湧いてないと……思うんだ」
ヨッシーは言葉を選ぶように、つっかえつっかえそんな事を説明してくる。
「ふーん……」
あたしはあらためて目の前の彼を見てみた。
一見頼りなさそうな、どこにでもいそうな外見なのに……妙に違和感を覚える瞳。その中に何かが潜んでいそうな……。
最初から感じていた不思議な感覚の正体が少し分かったような気もした。この人は――何か――やっぱり特別なのかもしれない。
それがあたしの勘違いだったとしても……あたしは心に決めてここに来た。
『おひかりが選んだ人に、あたしの全部を捧げる』……って。
「現実離れした状況だから……現実感を持ってない人が、一番正しく物事を見れたりするのかもね」
「……なんか変な理屈じゃね?それ」
「いいの。理屈じゃなくて、運だから。やっぱあたしは運がいいなーって話」
目当ての人に一番最初に会えていたんだとしたら……そう思っていいはずだ。
「あの……マジで100意味分からないんですけど……」
「だから別にいいんだったら!っていうか、あたしの事よりそっち。ちゃんと無事に戻ってきてよね。死んじゃったらやりたい事もできなくなるんだし。
なんだっけ?あたしの太ももに顔をはさまれたいんだっけ?」
「ちょっ!い、いや……」
ヨッシーが再び顔を真っ赤にする。
いかん、この可愛さはクセになってしまいそうだ。
でも実際あたし太ももわりとゴツいかもしれないし、こんな粗末なものでお挟みするなんて想像するだけで恥ずか死ぬから無理だけど。
「そっ!そっちの方がヤバいだろ……こんな場所で手まで縛られて……」
「あー……それは……平気。ほら……」
あたしは声をひそめ、チラッと視線を横に向けて目くばせをする。
そこには壁に立てかけられている又三郎があった。
【あ、そうか!手を縛られてても勝手に動く木刀があれば問題ないんですね!】
「わっと……そっか、ごめん寝起きで気づかなかった。イズちゃんもいたんだったね」
【いましたよー……なーんか……いい雰囲気だったから、思わず静観しちゃってましたー……どゅふふ】