ヨッシーが叫びながら壁を指さし――その瞬間、爆音と共にその壁が吹き飛んで――それは現れた。
『グゥオオオオオオオオオーーッ!!!!』
「……はっ……こりゃ、ダメだ。間近で見ると確かに”逃げる”しか選択したくなくなるな……」
そこに立っていたのは圧縮された恐怖そのものだった。
その存在がそこにあるだけで……地面がそちらに傾いたような錯覚すら起こす。
なんという圧倒的な気配……。
「全員!床をねらええええ!!!変われるもんは変わってええ!!床を崩して落とすんじゃあっ!!!」
「退避っ!!退避よっ!!正面に立つな!!距離をとって!!」
ヌマタとイルヴィーがほぼ同時に指示を飛ばす。その速さと的確さは賞賛に値したかもしれない。
イルヴィーの部下達は広がりながら威嚇射撃を開始し、盲羅の何人かは異形のモンスターに変身して対応を開始する。
が……それでも追いつかないほどの戦力差が存在するようだった。
「ぎゃっ――!!」
ハンターが無造作に振るった腕で何人もが吹き飛ばされていく。
「離れて!!離れるのよっ!!!」
イルヴィーはそう言うが、そもそもそれほどスペースもない上に、盲羅とイルヴィー達の双方がわさわさいる状況だ。離れろと言われても難しいだろう。
牢獄の中で放り込まれた獣から逃げ回るに等しい。
――ここがチャンスかもしれないねぇ。
「なんて事してくれたんだ!!君がおひかりなんて持ってるからあんな奴が来たんだろうがっ!!」
「……へっ!?いや、俺は……」
私はヨッシーにつかみかかり、その胸ぐらをつかみあげて振り回す。
突然の事にヨッシーは目を白黒させた。
「お前なんか助けに来るんじゃなかったよっ!!!」
慌てふためくヨッシーに有無を言わせず――私はイルヴィーとマリのいる方角へとヨッシーを突き飛ばした。
「――わわっ!!」「きゃっ!」「何ー!何よ!!」
ぶつかりよろめいた3人に走り寄りながら――拳を握る。狙いはもちろん――
その瞬間、イルヴィーも迫る私に気づいたようだった。
「ちょ――待っ――鼻はもうやめ――!!」
「アラタパンチ!!!」
「ぎゃんっ!!」
なるほど。叫びながら殴るとなかなか爽快だ。
別に正義は感じないが。
【うわー……もう鼻なくなるんじゃない、その人……】
「鼻もちならない奴……ってね。まさに言葉通りじゃないか」