「――っ!?ぐふっ!な……?」
「1回見捨てようとしたじゃん!!クズ野郎!!」
「……知って……?」
【――説明の続きだ、オトウノリヨシ。モニタリング中の人間の視覚と聴覚は全てのモニターとその担当者達に共有されている。つまり……今、君が見ているものも、僕との会話も、全て他のモニターに筒抜けって事。目の前のその人にもね】
淡々とボイスはそんなとんでも内容を説明してきた。
――な、なんだそれ……どんな科学技術があればそんな事――
いや……この銃も、あの蜘蛛人間も……すでに”現実”の範疇は超えているか……。
「なんの目的があってこんな事……俺は……どうしたら家に帰してもらえるんだ……?」
「??……なんだい、君は?これがなんなのかも知らずに参加してるの?」
少女が怪訝な顔で首をかしげる。
肩まで伸びた黒髪がサラッと揺れた。大きい瞳に白い肌。
その仕草1つとっても、一発でバズりそうなくらい可愛かった。なんで、こんな子が……いや、それよりも……なんだ?
この子は事情が分かってるってのか?
【それはさっきも言った。君達はハンター以外で最後の一人になるか……もしくはハンターを倒せばクリアとなる】
「ハンター?敵って事なら変なお化け人間は今全部倒しただろ?」
【ふふん……アレはハンターとは違う。あんなものが最終目標のわけないだろ。もっともっととんでもなく恐ろしい存在が――】
「……あのさ。最初からちょっと思ってたんだけど」
【え?】
「お前……なんか自分の喋りに酔ってないか?ゲームマスター気取りというかなんというか……もっと普通に喋ってくれたほうが会話しやすいんだが」
【な……っ!】
もしかしたら、俺は何か言うべきじゃない事を言ってしまったかもしれない。
昔からそうだ。
俺は……いつも、どこかズレてしまう。
それでここまでの人生でも多くの人を激怒させたりしてしまったわけだが……はたして脳内の少年もそれこそたぶん顔を赤くして何かを言いかける気配が伝わった。
――が――
ボイスの言葉よりも先に恐ろしい破壊音が夜空に響き渡るのが先だった。
「おわっ!こ、今度はなんだっ!?」
【――アレだよ。説明する手間が省けたね。ハンターさ】
不意に時計台の針があった部分の壁が吹き飛ぶ。
建物が中から破裂するように――黒く大きな穴が空き……そこから何かがぬっと顔を出すのが見えた。
「……アレ……か……」
隣にいた少女がぐっと唇を噛み、鋭い視線を送る。
少し身をかがめて、ぎゅっと木刀を握りしめ……つまり臨戦態勢に入ったようだった。
【通称ハンター。君達を追い、殺すために存在している者。それがアレだよ。もし今戦うなら先に言っておくけど――】
――は?