第1章

第1章6ページ「Sprung」

「え……ゲーム……?」

 

【まぁ……そういう事かもね】

 

まるで他人事そのものの口調でボイスが応えた。

いや……こいつには本当に他人事なのかもしれない。

 

【でも……なんでいきなりそんな判断ができるんだよ。変だぞ】

 

「この状況でお前に変だとか言われたくないんだけど……くそ!聞きたい事・・・・・腐るほどあるけど……マジで100それどころじゃねえ!」

 

さっき少女が蜘蛛人間に追われていた庭園エリア。おそらくここも時計台の階層の1つなんだろうが……ここから下に行く階段が見当たらない。

 

あのハンターが本気出して走ってきたらすぐに追いつかれて……たぶん、殺される。

 

「ねぇ!よく分かんないんだけど!とにかく、今は逃げないとマズいって事!

?」

 

「あぁ、そうだよ。行き止まりで逃げ場がないんだけどな!」

 

走りながら少女に言い返す。そして――ついに、庭園の端……白い装飾された柵の場所まで来てしまった。

身を乗り出して下を見る……。

 

案の定……絶望的なほど地面が遙か彼方……というか地面すら見えない。暗い闇があるだけだ。

 

何階建てなんだよ……どう見繕っても20階以上はある。飛び降りて助かる高さじゃないのは確実だ。

 

「……んー……分かったぁ。じゃあ、しょーがないなぁ。君も一応少年だし、ここは従っとくかぁー。じゃあ、逃げよ」

 

「……はぁ?いや、だから……それが無理だから困って――」

「又三郎――っ!!」

 

剣道少女が不意に木刀に向かって意味不明の叫びを上げる。

……ヤバい?なんかサイコさんな子だったんだろうか?

 

しかし――その叫びに応えるように――少女が手にした木刀が震え始めた。

 

「あはは、ごめん。この子……木刀のくせに高所恐怖症なんだよね。でもこの状況ならたぶん、納得すると思う。だから、あたしにしっかりつかまって。あ、言っとくけど変な場所触ったらその場でポイするので――」

 

「え?いや……はぁ?ちょ、ちょっと……意味が100伝達してこないんだけど……」

 

「だから――あたしの腰あたりにつかまって――」

その時――唐突に――もの凄い――まるで地獄から響く怨嗟のような――魂まで揺さぶる――大声が響いた。

 

ウォォォオオオオオオオオオオオオ――――――ッ!!

 

そして――その叫びと共に――恐ろしい速さでハンターが迫ってくる。

もう――余計な事を考える余裕は俺には無かった。

 

「早く!!!」

 

何も分からないまま、無我夢中で少女の腰にしがみつく。

 

その瞬間、少女の身体がフワリと宙に浮き――柵を超え――闇夜に飲まれるようにして、俺達は落下していく。

 

「う……わ ……ぁああああああ!!!」

 

「ま、又三郎――っ!横へ!!」

 

ぐいん!とフックに引っかかるように少女と俺の身体が浮き上がる。

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