「え……ゲーム……?」
【まぁ……そういう事かもね】
まるで他人事そのものの口調でボイスが応えた。
いや……こいつには本当に他人事なのかもしれない。
【でも……なんでいきなりそんな判断ができるんだよ。変だぞ】
「この状況でお前に変だとか言われたくないんだけど……くそ!聞きたい事・・・・・腐るほどあるけど……マジで100それどころじゃねえ!」
さっき少女が蜘蛛人間に追われていた庭園エリア。おそらくここも時計台の階層の1つなんだろうが……ここから下に行く階段が見当たらない。
あのハンターが本気出して走ってきたらすぐに追いつかれて……たぶん、殺される。
「ねぇ!よく分かんないんだけど!とにかく、今は逃げないとマズいって事!
?」
「あぁ、そうだよ。行き止まりで逃げ場がないんだけどな!」
走りながら少女に言い返す。そして――ついに、庭園の端……白い装飾された柵の場所まで来てしまった。
身を乗り出して下を見る……。
案の定……絶望的なほど地面が遙か彼方……というか地面すら見えない。暗い闇があるだけだ。
何階建てなんだよ……どう見繕っても20階以上はある。飛び降りて助かる高さじゃないのは確実だ。
「……んー……分かったぁ。じゃあ、しょーがないなぁ。君も一応少年だし、ここは従っとくかぁー。じゃあ、逃げよ」
「……はぁ?いや、だから……それが無理だから困って――」
「又三郎――っ!!」
剣道少女が不意に木刀に向かって意味不明の叫びを上げる。
……ヤバい?なんかサイコさんな子だったんだろうか?
しかし――その叫びに応えるように――少女が手にした木刀が震え始めた。
「あはは、ごめん。この子……木刀のくせに高所恐怖症なんだよね。でもこの状況ならたぶん、納得すると思う。だから、あたしにしっかりつかまって。あ、言っとくけど変な場所触ったらその場でポイするので――」
「え?いや……はぁ?ちょ、ちょっと……意味が100伝達してこないんだけど……」
「だから――あたしの腰あたりにつかまって――」
その時――唐突に――もの凄い――まるで地獄から響く怨嗟のような――魂まで揺さぶる――大声が響いた。
『ウォォォオオオオオオオオオオオオ――――――ッ!!』
そして――その叫びと共に――恐ろしい速さでハンターが迫ってくる。
もう――余計な事を考える余裕は俺には無かった。
「早く!!!」
何も分からないまま、無我夢中で少女の腰にしがみつく。
その瞬間、少女の身体がフワリと宙に浮き――柵を超え――闇夜に飲まれるようにして、俺達は落下していく。
「う……わ ……ぁああああああ!!!」
「ま、又三郎――っ!横へ!!」
ぐいん!とフックに引っかかるように少女と俺の身体が浮き上がる。