第1章

第1章11ページ「Infektion」

不意に横にいたヨッシーが声を上げた。「だって……”勝つ”奴につかなきゃ意味ないんだし。逆に勝ちそうにもない奴は殺したほうが得だろ。その貢献を”勝つ”奴に認められたらおこぼれもらえる可能性上がるし」

 

「……なるほど……って思うけど……それ……今この状況で言うべき事だったの……かなー……」

 

ヨッシーが「あ」という顔をする。この人……なんか鋭いんだか抜けてるんだかよく分からない人だ。

 

「その兄ちゃんの言うとおり。わしらはこの世界をそういった駆け引きで動きよる。あんたらをイグラムールの連中が襲ったのも見とったよ。アレがあいつらのやり方じゃけえの」

 

「イグラムール……って、さっきの蜘蛛人間?やり方って……なんでいきなり襲ってくるの?いきなりすぎてちょいヤバだったんですけど!」

 

いきなりあんな襲われ方したら、流石のあたしでもテンパる。

 

「あいつらは単体じゃ弱い。じゃけえ……不意をついて感染させようとするんじゃ」

 

――感――染――?

 

「あいつらの誰かに身体のどこかを噛まれたら、そこから毒が回って感染する。で……時間と共に噛まれた者もあいつらの一人になる。じゃけえあいつらは<群衆者>とか呼ばれとるんじゃいや。そうなったらもうどうしようもないけえの。じゃけえ……わしらは確認に来たんじゃ。のう?」

 

オールバックの盲羅は眼を細めながら――真っ直ぐにあたしを見る。その視線は、まるで全身にまとわりつくような粘り気を感じさせた。

 

――え――でも――噛まれたらアウトって――それ――

 

【ひ……こ、こたつさん……その左手……】

 

頭の中に――怯えたイズちゃんの声が響いた。

あたしは左手を上げ――その手の平の部分をじっと見る。

……小指の付け根の下……手首に向かって……歯形状の傷と……そこから不気味な青紫のアザが……広がっていた。

 

「あ……あーははー……さっき……噛まれちゃってたよーん……」

 

「え……」

 

ヨッシーが目を見開いて絶句し、オールバック盲羅がアゴに手をやって思案顔になった。

 

「あー……やっぱダメじゃったかいやー……。ほいたら……どうしようかいのぅ……」

 

「いやいやー……でも、ホラ。あたし昔っからなんとなく運は強いし……たぶん、なんとかなるんじゃん?」

 

「なるかいアホぅ」

 

間髪入れずにオールバック盲羅はツッコミ入れてきた。傷心の女の子をいたわる心とかないのか。

絶対モテない奴だ、こいつ……と、あたしが思った瞬間。

 

――パン!  そんな乾いた音がやけに非現実的に響いた。

 

「あ……つ……っ」

 

【こたつさん!!!】

 

撃たれた。

いつの間に取り出したのか。オールバックの手に握られた銃から微かな硝煙が立ち昇る。

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