――第3章―― ジュウの牢獄
――この物語には【ある偉大なルール】が存在する。
それを一番早く正確に理解した読者に、その者の世界での、形ある栄誉を与える。
聖ミヒャエル協会
【ほんとうのものは一つもない。大事なことは一つもない。】
♓️聖ミヒャエル協会「聖典」第3章2行目より
【――モニタリングを開始します。オトウノリヨシ】
【へぇ……事務所ってこんな感じなんだ】
きっとテレビで見たならボイスと同じく俺もそんなノンキな感想だったろう。
しかし現場にいる者は……やたら空気が薄く感じて……息苦しさで死にそうだ。
ソファに座らせられた俺とこたつの前にある低い長テーブル。
その向こう側に座り、オールバックの盲羅は誰かとスマホで会話している。
だが……その視線は俺を観察するようにぴたりと張り付いて離れない。
そして座る俺の背後にも盲羅が3人。
ドアの所に2人。
壁に貼られた『生は理不尽、死は平等』という達筆で書かれたおっかない文字の前に1人。
その全員が銃を持っている。
……とにかく……まず、逃げるのは諦めたほうが良さそうだ。100無理め。
【あれ……?白木こたつは寝てるのか】
そう。それも逃げられない事情の1つ。
こたつは盲羅によって止血をされた後、気を失うようにして寝た。
止血の際に『脱がすなえっち!』とか暴れまくったせいなのもありそうだが。
今俺の隣でソファに座りながら、頭を俺の肩に預けてもたれかかるように寝ている。
こんな状況じゃなきゃドキドキしたかも知れないが、こんな状況のせいでドキドキが止まらない。
「んー……分かった。ほんじゃあの……」
そう言ってオールバックは誰かとの通話を切ったようだった。
「――とりあえず安心せえや。ハンターは近くにはおらんようじゃ。……その点はわしらに感謝してほしいのう。わしらがおらんかったら、間違いなくまたハンターに襲われとったじゃろうし」
「……間違いなく?」
乾いて動かしにくい舌を使い、俺がなんとかそう質問するとオールバックは「おお」と頷いた。
「ハンターの追跡にゃ優先順位があるんじゃ。まず、シャウシュピーラー……つまりあんたら。そして、1人より複数を狙いやすい傾向にある。……が、それに加えてアレが追い回すんが……それ、おひかりを持っとる奴なんじゃ」
「え……」
そう言われて俺は自分のポケットに目を向けた。これ……そんなヤバいモンなのか。
「2人おる上に“おひかり”まであったらまぁ……どこまでもしつこく追いかけられたじゃろぉのぉ」
「でも、そんな……人数多いとこに来るなんて習性あったら協力プレイもできないし……ぜ、全員同じタイミングで全滅させられる事だって……」
「いや、それはないらしい」
「……ない?」
「あぁ……どういう仕掛けか知らんが……ハンターは1人殺すと、しばらくその場に固まって動かんくなるんじゃ。たぶん、兄ちゃんが言ったみたいにすぐ全滅とかにならんためのセーフティ機能かのぅ。時間は……10分くらいだった気がするわ」
――そんな仕組みが――それは――俺がやっていたゲーム《皇夜行動》には無かったルールだ。
いや、当たり前か?こたつの話からしてこの“逢”って儀式は大昔からあったもののようだし……。そもそも別のものだと認識しないと――
ん?昔の時代からモニタリングなんてシステムあったのか?