第3章

第3章3ページ「Unvernunft」

永遠にも思えるほどの数秒。

 

――が、やがて――オールバックは笑って肩をすくめた。

 

「ま、しゃーないか。さすがにいきなりこんなのは怖すぎるよのぅ。悪い悪い。わしとしては是非兄ちゃんと杯かわして血縁になりたかったんじゃが……流石にちょっと欲張りすぎたわいや」

 

「……あ……はっ……ふっ……ぅ……」

 

「ほんなら……こっちでええよ。まぁ脅かしたワビ代わりと思うてくれ」

 

そう言って……これまたどこから取り出したのか……オールバックはテーブルの上に何かが書かれた紙とペンを置く。

 

……会員……登録……?

 

紙にはそう書かれているようだった。

 

「わしらぁ身内はキチンと助ける。わしらの身内になってくれるんなら、キチンとそこのお嬢ちゃんも助けるし兄ちゃんの手助けを全面的にしちゃるよ。ほら月額制の会員とか何かで入った事あるじゃろ?

流行の言葉で言うなら要するにサブスク?アレと一緒よぉ。

一定期間ごとに兄ちゃんのものをほーんのちょっとずつもらう。それだけじゃ。

タダで手助けはできん。そりゃ当たり前の道理。

……わしの言うとることは……分かるじゃろ?」

 

「あぁ……は、はい……」

 

「一応形は大事じゃけえの。ここにサインだけしといてくれぇや」

 

そう言ってうながされるままに、俺はペンを受け取る。

 

良かった――まぁ――アレを飲まされるくらいなら――これくらい――。

 

――は?

 

「いや無理だし」気づくと俺はそう言っていた。

 

「……ん?」

 

「無理無理、全然無理。だってこれ、ゲームとかでよくある後半回収イベントじゃん絶対この契約をしてしまったがためにラストの決定的な場面でとんでもない事になるやつこれにサインしたらファンタジー世界特有のなんか呪いだの魔法だのがかかるんだろどうせ大体この手口もなんかのテレビで見た事あるし絶対にできっこない無理難題を最初にゴリ押しされてから、さも譲歩したように悪質な契約を結ばせるやつ不自由な自由選択ってやつ?誘導して自分で選ばせたように追い込むやつだこれこんな詐欺手口乗れるわけないし、本当無理もう100無理大体俺サブスク自体大っ嫌いなんだよ!なんだよアレ少しづつお金取ってくシステムとかもう必要なくなっても知らない間にお金取られていったりするじゃん!マジ嫌いだあのシステムカタカナの名前とかにして流行とかって言ったらなんとなく信頼できそうなイメージになるだけで実質めちゃくちゃ悪質な搾取してくるの目に見えてる無理すぎ無理ぃ!」

 

一気にまくしたてた俺にオールバックは呆気にとられた顔をしたが――呆気にとられた顔のまま、懐から銃を取り出した。

 

「ぴ―――んぽ―――ん!かーしこいけど……お前アホじゃろ。そこまでハッキリ言われたら……もう交渉の余地は無いで?」

 

「……あ……」

 

【まぁ……そうなるよな……】

 

オールバックは銃を俺の隣の――こたつへと向ける。

 

「なら……今すぐこの女は殺す。そんで兄ちゃんは……まぁ、使い道を思いつくまでここに監禁しとこうかい。それとも、その銃でわしらとやりおうてみるか?」

 

――そんなの――できるわけない――。

 

俺はなすすべなく、こたつに向けられた銃口を見た。

 

いや、だって……さっき知り合ったばっかりの女の子だ。可愛いけど、命張って助けなきゃならないほどの義理はない。

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