無限に広がる選択肢。
でも――だからこそ――何を言えばいいのか分からない。――俺――は――
「う……あ……け……携帯……ばん、番号……?」
気づくと俺は……そんな言葉を口にしていた。
「携帯番号??そりゃー……わしのこの携帯の番号って事かいの?」
「そ、そう……」
オールバックは不思議そうな顔をしている。そりゃそうだ。俺だって不思議だ。
でも……もう口に出してしまった。
「ふーん……ええよ……番号は……」そう言ってオールバックはその番号を俺に伝えてくる。ご丁寧に手にしたスマホに番号まで表示させて。
俺は完全に上の空でそれを聞いていた。だって……そんなの聞いて俺に何の関係があるのかも分からない。
……ダメだ……もうどうしようも……。
――しかし、その瞬間――唐突に、オールバックの手の中でスマホが震え始め――着信音を奏でた。
【……あ、もしかして……】
「……ほう……」
慎重な目つきでオールバックはスマホを……そして、俺の顔を見る。
それから……スマホの画面をタップした。
「はいよ、もしもし?どちらさんで?……ん……アンタぁ確か……」
【――モニタリングを終了します】
【――モニタリングを開始します。ヤガミアラタ】
単調な電子音がモニタリングの開始を告げた。
【あっ!電話は探偵さんだったんだ!】
――タイミングが良すぎる。やはり明らかにモニタリングはランダムではないな。だとしたら――いや、今はそれよりも――
「はじめまして、盲羅さん。私の事を知ってくれているようで光栄だね。でも一応名乗っておこう。八神改。――探偵だ」
私はスマホを耳に当てながら、通話相手に話しかけた。先ほどまで阿籐君の視点で見ていた男。盲羅の1人……たぶん、リーダー格の男に。
『……なるほどのぅ。シャウシュピーラー同士には何か……情報交換できる方法があるって事かい。前から少し不思議じゃとは思っとったが……』
「あぁ、私とそこの阿籐君にはお互いの情報を交換できる手段がある。なんだ、それは知らなかったのか。だったら――私の話をよく聞いたほうが良さそうだ。なんせとっておきの耳より情報もあるしねぇ」
彼の声には警戒の色が濃くある。この展開のどこまでが作為的なものなのかを考えているんだろう。
まぁ、実際はかなりたまたまではあるんだが。
咄嗟に私が所持しているスマホの事を思い出した阿籐君を褒めるべきだろう。
彼が盲羅から番号を聞き出してくれたおかげで私が介入する事ができた。