第3章

第3章7ページ「Neid」

 

「…………」

 

――仕方ない――か。

 

「分かった。なら、とりあえずそういう事にしといてもいい。が……どうしても必要になったら無理にでも手伝ってもらうし……それまでその子の身柄は丁重に扱う事だ。最低限のマナーも守れない奴と取引するつもりはない」

 

『くく……ええよ、約束したる。で?双子の女の居場所は?』

 

「最初に言ったろ?耳を寄せに来いって。待ち合わせをしよう。そこに阿籐君を連れてきてくれ。阿籐君と《おひかり》を確認したら――場所を教える」

 

『そりゃあ一方的な条件じゃのう。罠かもしれんし、先に情報の裏付けくらいもらわんと動く気になれんで』

 

「罠?そっちのほうがずっと人数いるだろ。どう考えてもこっちが不利なのを分かってもらいたいねぇ。そっちは人数そろえて銃持って来ればいい。私達が変な動きもできないように目を光らせながら、ね」

 

『――場所はこっちが指定する。西丙号ビルの《10番ターミナル》。そこのじいさんに聞きゃ案内してくれるわ。時間は今すぐ。そのまま来いや。じゃあの』

 

プツッ……という音をたてて、通話は切れた。

 

やれやれ、だな。私はスマホをポケットに戻すと、手短に周りにいるみんなに事情を説明した。

 

モーリの隠れ家……ホテルの1室、といった感じだが、数人が集まって話せるくらいの広さはある。

幸い応急手当に必要な道具も食糧などもあったので、私達は軽く一息つけていたところだった。

どうやらこれからまた忙しくなりそうだが。

 

「――じゃあ……アラタは、そこに行くの?……また危険な場所に?」

 

心配そうな顔をするマリに私は笑いかけた。

 

「心配ないさ。軽く話し合いをしてくるだけだ。マリはここでのんびり待ってればいい。ただ……ユーダイにはしてもらいたい事がある。足は?いけそうかい?」

 

「問題ない。自己治癒に意識を集中していた。完治とはいかないが、戦闘もできる」

 

「そりゃ良かった。マリも応急手当ありがとさん。助かったよ」

 

「そんな……これくらい……」

 

【ふーん……かなり打ち解けてるじゃん……】

 

不意になぜか少し不機嫌そうなレコードの声が割り込んできた。

 

「……ん?」

 

【なんか……探偵さんって……】

 

「いやいや“アラタ”でいいよ。そっちも私から”レコードさん”だとか呼ばれたくないだろ?」

 

【……アラタって……無駄にコミュ力高いよね】

 

「え、そうかい?っていうか無駄って事もないと思うが……」

 

突然誰かと話し始めた私にマリが不思議そうな顔をする。「さっき説明したろ。レコードが話かけてきてるのさ」と言うと「ああ!妖精さん!」とマリの顔が笑顔になった。

 

頭の中の妖精。……まぁ、そんなとらえ方でも間違いではないかな。

 

モニタリングが回ってない間に色々話が進んでいる事がレコードには不満だったのかもしれない。

が――ここで機嫌を損ねられても困る。

 

「まぁ、私のコミュニケーション力がどの程度のものかは知らないが……実際のとこ、ここから先は私より君の力が必要なんだよ、レコード」

 

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