【……え?あ、あたし!?】
「そうさ。ぜひ君の力を借りたい」
【そっ……な……えっと……ど、どういう事……?】
「それでは探偵アラタが説明しよう」
私はニヤリと笑うと部屋のテーブルに広げてある“それ”を芝居っ気たっぷりに指さしてみせた。
まぁ……あれを用意してくれたのはモーリなんだが。
【……これ……地図?】
「そうさ。このウタカタって街の地図。平面のね。そして……これを立体で現わしたものを……先ほど……私も、そして記憶力のいい君も見たはずだ」
【もしかして……さっきの……転生って人のモニタリング?】
「そう。あの時魔法だか何だかで空中に表示された立体図面。……と言っても数秒だったし、この街の住人でもない私にはまるでピンと来ない映像で……さっぱり頭に残っちゃいない。この平面図を見ても何がなんだかだ。でも――」
【あたしなら……憶えてるし、その地図と照らし合わせる事ができるかも……って?そういう事?】
「当たり。話が早いね。どうかな?流石に難しいかも、とは思ったんだが……もし可能なら助けてほしい」
私がそう言うと、照れたように口ごもる気配が伝わった。
【……うん……たぶん、できるよ……。もう少し地図に近寄って見せてくれる?】
「ありがとう」
私は頭を下げて礼を伝える。見えてないんだろうが、こういった事は大事だ。
無理なら仕方ないと思っていたんだが……彼女はどうやら本当にかなり優秀な記憶力の持ち主なんだろう。
あの短時間で複雑な立体図を記憶するのは、常人離れした記憶力が必要なはずだ。
とてもありがたい展開だった。
「モーリ、来てくれ。街の説明をしてほしい。ユーダイ、一緒に見て憶えてくれるかい?レコードは、あのモニタリングで見えた“赤く光っていた場所”。それがこの平面図で見てどこだったかを教えてくれ。いいかい?地図の上に私の指を置く。その指に上下左右でどちらに動かせばいいか指示してほしい」
【ウユとララって人がいる場所だよね?じゃ、さっき電話で言ってたのは――】
「そう、全て嘘ってわけでもなかったのさ。もっとも……おひかりがどうとか女性が必要だとかはテキトーだけどね」
――やがて、レコードの記憶とモーリの説明の元に――その場所が浮かび上がる。
「……何てことだ。ここは《牢獄》、そう呼ばれてる場所だ」
モーリが眉間にシワを寄せて言う。「牢獄?」そう聞き返すと説明をしてくれた。
「噂では“別の世界”へ通じている穴が空いている場所なのだと。だから封じられている場所で……一度中に入ればこちらへ戻って来られないと聞いた。そして……そんな場所だからこの街の廃棄物処理場にされている、とも」
「はっはー……そりゃあ、なかなか見つからないわけだ」
「この街に不要なモノ。さらに罪人や手がつけられない恐ろしい獣もそこに放り込まれていると言われている。だから……《獣の牢獄》と言われる事もあるようだ」
「なるほどね。――で?そこに行くにはどのルートで行けばいい?」
「さっき盲羅が指定してきた10番ターミナルから行ける。ターミナルというのは、元々この街のあらゆる場所への近道として作られている場所だ。だからそこを指定してきたんだろう」
「……そういう事か……」
私は帽子を取り、髪をぐしゃぐしゃとかき回しながら思案した。