「は!ヨッシーだってちらちらあたしの太もも見てるくせに。そーゆーの、全部バレてんだからね」
そう言ってにまーっと笑うと、ヨッシーは漫画か?と思うほどに真っ赤になった。
「べべべ別におれぶぁっ!?がはっ!げほげほっ……」
「あーむせないむせない。落ち着く落ち着く」
「お、落ち着けるか!」
「あたしは落ち着くよ。こんな時……ヨッシーみたいな人がいてくれて」
「え……」
「すごく頼りになる凄い人も必要だろうけど……自分にできる精一杯で接してくれる人は……安心する」
「…………」
……いや、そこは何か返してくれないと、言ったあたしも恥ずかしくなってきちゃうじゃん。
しまった何これ、噂の吊り橋効果?
危機的状況に陥った時に思わずラブっちゃうやつだ。
そんな場合じゃないのに。
「あ――そ、それにさぁ。ヨッシーはおひかり持ってるじゃん」
「あ……これな。これ、結局なんなんだ?」
「あたしもそれが何なのかはよく知らないけど……“後ろの少年”はそれを持ってたって聞いてる」
「……後ろの少年?何そのホラー映画みたいなワード」
……失礼な。こっちはそれに子供の頃から憧れていたというのに。
「たぶんヨッシーだって聞いた事あるはずだよ。この歌」
そう言ってあたしは口ずさんだ。
子供の頃から何千回と聞いたその歌を。
かごめ かごめ かごの中の鳥居は
いつ いつ で 逢?
夜明け の 晩に
通ると 神が 統べた
後ろの 少年 だぁれ?
「……知ってるけど……俺の知ってる歌詞とはちょっと違う気が……」
「そう?あたしが育った白木神社にはこう伝わってるんだ。で、こう聞かされてきた。
夜明けの晩……つまり、いつもと違う時間……いつか、この世界を救うために、その少年が《おひかり》を持って現れる……って」
「ええ!?嘘だろ?これ救世主イベント確定アイテムなのかよ!?その者青き衣をまといて金色の野に降り立たないといけないのかよ!?」
「ちょっと何言ってるか分からないけど……《おひかり》は後ろの少年だけじゃなくて、色んな人が必要な時に持たされて使ったって聞いてる。あたしのご先祖様も。だからまぁ、それ持たされてるだけじゃ別に何も確定してないと思うよ」
「それは……良かった……けど……でも、結局なんなんだ、これ?」
「……あたしのおじいちゃんは……スポットライトみたいなもんって言ってたけど……意味はよく分からなかったなぁ」
「スポットライト?」
「そう。誰だって自分の人生では自分が主役なんだけどさ……普通に生きてるとそれを忘れちゃうというか……大衆の一部になっちゃうっていうか?
でも、突然光が当たると思い出すんだってさ。これが――自分の物語だったんだって」