【……馬鹿な……事……】
自分の声の反響のように、エコーの声が脳内に響く。
「強い力を持つ者は、自分の思想を他人に強制できる。弱い者がそれに抗うのは難しい。だが……それでも、大事なものを奪われそうになった時は死に物狂いで抵抗するしかない。自分にとってはそれがマリだ。
だから……アンタの思想がどうであれ、マリのためになるのなら自分はかまわない」
「…………」
言葉に詰まった俺に背を向け、再びモーリは前を向いて走り出した。
俺はその背に無言で従う。
奇妙だ。
走行に支障がでるほどの異常を体調に感じないのに――なぜか――
自分の身体が、ひどく不安定に揺れている気がした。
【――モニタリングを終了します】
【――モニタリングを開始します。テンショウナナミ】
――実に良いタイミングだね。
「It’s Showtime♪」
ボクが発動させた《炎呪》の符はすでに火球と化していた。そのままドアへ一直線に飛び――そして轟音と共にドアと部屋全体を覆っていた結界を吹き飛ばす。
「――わぁっ!?なになにっ!?」
部屋の中にいたお姉さんが驚きの表情で振り返った。白木こたつ。
あー……やっぱもう自力で脱出しようとしていたのか。
部屋の中にいた盲羅はすでに、ほとんどが床に倒れていた。たぶんボクの魔術のせいじゃない。
彼女が手にしている木刀で殴り倒されたんだろう。
残った盲羅にも《雷撃》の符を飛ばす。
「――ちょ、われっ――!!」
という怒声ごと、男の身体は吹き飛んだ。血を吐きながら、崩れ落ちる。
【うひょーえぐー!】
ちょっと子供には刺激が強すぎるかとも思ったんだけど、最近の子はこのくらいなら平気か。
「……何これ……爆弾?」
お姉さんは呆気に取られた顔でこちらを見ていた。
「いや魔術だよ、お姉さん。初めまして。通りすがりの悪者です。
今お姉さんに逃げられると面白くなくなりそうだなーって思ってやって来ました」
ボクはにっこり微笑み、華麗にお辞儀をしてみせる。
お姉さんは目を細めた。