「じゃが……その話がホンマじゃとしたら……何人かが戻ってもどうにもならんかもしれんのう。魔法使いっちゅー話なんじゃろ?」
「魔法使い……?なんだいそれ、もう襲撃者の特定ができたのかい?早いね」
「……いーや……まだじゃわぁ。ちぃと待っといてくれるかい」
私が無表情に返すと、オールバックはそのまま通話に戻る。
……その程度のカマかけに引っかかるほど青くもないんでね。だが……やはりあの魔法使いの子の情報も入手していたのか。
【あれ……?まただ……】
「……ん……私だ。もしもし、どうしたんだい?……レコード、何か気になる事でもあるのか?」
レコードの声を聞き、私はとっさにスマホを取り出して通話をするフリをした。レコードと話すために。
【あ……いや、大した事じゃない……のかもしれないけど……】
「些細な気づきが事件解決への手がかりだったりするのさ。言ってみてくれないか」
チラッと盲羅を見る。あちらはあちらで通話に忙しそうだ。こっちの会話に聞き耳を立てている様子もない。
【あのね……あの盲羅の人の……サングラスと……スーツの形が……さっきとちょっと違うと思ったの。オトウノリヨシって人のモニタリング見てた時と……」
「……へぇ?そうなのか……いや……私は気づかなかったな。でも、君が言うんなら確かなんだろう」
レコードの記憶力の正確さはもう実証済みだ。私や他の者に気づけない事でも、彼女なら気すいて不思議じゃない。
しかし――サングラスとスーツ――確かに少し奇妙だ。わざわざこの状況で替えるほどのオシャレさんにも見えない。
【……本当にちょっとした違いだし……何でもない事だったらごめん】
「いや……そんな事ないよ、助かる。ありがとう。それに、さっき言ったね?”まただ”って。前にもあったって事だろう?」
【うん……実はこたつって人の服とかも……】
「……白木さん?もし彼女が寝ている間に服を脱がされていたりって話なら問題だし、この場合は阿藤君の人格を疑う事態になってしまうんだが――」
『ちょ……じょ、冗談じゃねーぞ!!』
――そんな声が盲羅達の集団の後ろから聞こえた。
良かった、約束どおり阿藤君はここに連れてきてもらえていたようだ。
確認する手間が省けて何より。
「こーら、兄ちゃん。まだ静かにしとけぇ言うたろーがい……。はぁ……まぁ、ええわ。こっち来いや」
何人かの盲羅に押し出されるようにして阿藤君が前に出てくる。
特に縛られたりはしていないようだ。
【――シード値を595700604に修正します】
【あ……直った……】
「直った?直ったって……見え方が……?……何も……変わってないが……そうか……そっちサイドの問題って事か……いや……後で話そう。じゃあまた」
【うん、またね】