「なんだこれ……エレベーター?」
「そうらしい。ただし、動くのは横で――しかも、かなりの速度だと――おおおっ!?」
それはモーリから聞いていた10番ターミナルから<牢獄>へと続く移動通路。
そうだ――確かモーリが言ってたっけ……。
『<牢獄>への通路はこの街の不要物を”廃棄”するために稼働している。おそらく他の移動通路よりも動きが少し荒っぽいだろう』
いや……少しなんてもんじゃないんだが……。
【うわー……見てるだけで怖い。もうモニタリング終わるし、あたし目閉じてるね】
「そ、そうかい……」
「――きゃぁああああ――」
【――モニタリングを終了します】
【――モニタリングを開始します。オトウノリヨシ】
「――あああああああっ!!!」
マリって子の悲鳴に混じって電子音が聞こえた気がする。
モニタリングが回ってきたのかよ。でも……ここで回ってきても……ぐえ……。
「マリ、ヨッシー。こりゃダメだ。ちょいと汚いが……仕方ない。立つのは諦めて床に寝よう」
確かにもう立っている事は不可能だった。
バーテンダーが振るシェイカーの中にいるような気分だ。
俺はなすすべなく床に転がりしがみつく。
「最悪の気分だけど……ハンターからは……逃げられた……よな?」
「たぶんね。モーリも言っていた。おそらく今から行く場所は盲羅の事務所と同じような存在なんだろう。ハンターは来れないだろうとさ」
「こたつは……大丈夫……かな……」
「ユーダイが向かってる。あっちは彼に任せよう」
あの馬鹿強い人か……まぁ……俺なんかが行くよりきっと何倍もマシだろうな。
そもそも、魔法使いだとか……あんなの俺になんとかできるわけない。
俺はため息をついて、仰向けになり天井を見上げた。激しく揺れながら、照明の点滅している無機質なエレベーターの天井。
こんな天井を見上げる事があるなんて――考えた事もなかった。
「……っていうか……俺、なんでこんなトコでこんな事してんだろう。今更ながらビックリだわ……」
【僕もビックリだったな……このゲーム、もっと簡単に終わると思っていたのに】
「お前か」
そー言えば……他の担当者に比べてこいつだけは……なんかやたら非協力的なんだよな。