「なぁ……レコード……だっけ……?あの子とか……エフェクトって奴も……けっこうそれぞれのモニターと仲良くやってる感じなのに……なんでお前だけ、いっつもそんな態度なんだよ?」
……少し……戸惑ったような気配が……あったような気がした。
【別に。僕たちはそれぞれ自由に接していいって言われてる。僕はあいつらと違って、仲良くなろうなんて気になれないだけさ」
「……俺が死んだら……何かお前の得になる事あんのか?」
【あるね。ゲームが早く終われば早く帰れる。それに――その時には僕の願いも叶えてもらえる。効率的だろ?】
「お前の願いって……なんなんだよ?」
【――――】
しばらくの間、沈黙が続く。いや……マリは小刻みに悲鳴をあげていたが。
やがて返答がきた。
【復讐】
「……誰に?」
【死んでほしい奴らに、だよ】
その言葉が……なんだか……どこかで聞いた事のあるセリフがして……俺は目を閉じた。
「……ちょっと……分かる気がする……」
【はぁ?なんだよそれ、気持ち悪い。何も知らない奴に脈絡なく分かるムーヴかまされたくないんだけど】
「”気がする”って言ってるだけだろ。誰かに死んでほしいと思った事……俺もあるからさ」
そうだ。
夜、布団をかぶりながら――腕をかきむしりながら――『死ね』と何度もつぶやいて呪った。
向けられた嘲りの笑い声がずーっと頭から離れなかった。
もう思い出したくもないのに、何度もその場面が脳内で再生された。
俺はあの感情から……ずっと逃げ続けてきたんだ。
【はーん……それで?死んでほしいって思った奴に……なんか仕返ししたの?】
「いや……してない。何も」
【だろうね。だから一緒にするなよ。僕は違う。きっちり行動で示す。何もできないグズに分かるだとか言われたくない】
「……その行動ってのは、自分でするのかな?」
それまで黙って話を聞いていたアラタが、横から入ってきた。
【……何の話?】
「行動で示すって言ったろ?君がしたい復讐。それは自分の手で何かするって事なのかい?」
【……僕が自分の意思でそう仕向けるんだ。僕の願いでそうなるなら……結果的に僕の行動って事じゃないか】
「どうかな。”実感”って大事だと私は思うんだ。自分の手を使って成し遂げた事じゃないと、それは得られない。得られなかった時……結局君は満足できないんじゃないかと思ってね」
何か……ボイスが苛立っている気配が伝わってくる。