――第4章―― 鏡のなかの鑑―メイQ
――この物語には【ある偉大なルール】が存在する。
それを一番早く正確に理解した読者に、その者の世界での、形ある栄誉を与える。
聖ミヒャエル協会
【おしるしは、神秘な羅針盤のように、かれの意志、かれの決断を
正しい方向へと導いてくれていた。】
♑️聖ミヒャエル協会「聖典」第8章14行目より
【――モニタリングを開始します。ライダユウダイ】
その場所にたどり着くのはそれほど難しくなかった。
焦った様子の黒服達がそこに向かっていたからだ。
そして場所さえ分かれば、用はない。
死なない程度に黒服達へ攻撃を加えて沈黙させる。
「――やぁ。待ってたよ。わりと早かったね」
その部屋で……四つん這いのまま呻いている少女の背に座り、ティーカップのようなものを口に運びながら……その人物が俺に話しかける。
その物腰は柔らかく、座っている場所が少女の背中の上でなかったら優雅なお茶会のようにも見えただろう。
「あぁ、このイス?せっかく悪役なんだし、これくらいはやってみようかなぁと思ってさ。柔らかくてなかなか座り心地はいいよ?軽くイタズラして遊んでたんだけど、命に関わる事はしてないからまだ元気だし」
「……ぐっ……」
顔を真っ赤にさせて四つん這いの少女が悔しそうに歯を食いしばった。
なるほど。確かに命に別状はないようだ。
「そうか」
「――さて。じゃあ、戦いますか。場所はここでいい?」
「俺はまだお前と戦うか決めていない」
「え、そうなの?なんで?ボク悪役だよ?」
俺はゆっくりと首を横に振った。
「誰が悪かは俺が自分で判断する事だ」
「ふーん……このお姉さんがこんなにいじめられているのに?」
「誰が……っ……くぅ……後でぜってーぶっ飛ばすんだからっ!」
下になっている少女が顔を赤くさせて叫んだ。まだ元気なようだ。
だとしたら、やはり俺の出番では無い気もする。
「生死の絡まない個人間の争いは個人間で解決すればいい」
俺のその言葉に相手は目を丸くさせたが……やがて少し不機嫌そうに目を細めた。
「個人間ねぇ……なるほどなるほど……そんな小さいスケールで見られてるんだ、ボク?あなた達全員とハンターを倒そうかなって話をしてるのに」
「それが何を目的とした行動なのかによる。俺は基本的にお前達の文明に対する関与はしない。お前達より遥か先の技術力を持つ者達として、その発展を見守る義務がある。お前達の文明が発展していく過程で、今後も様々な意見の食い違いが出るだろう事も承知しているからだ」
「……くふふ……くふふふふふっ……なんかムカつくなぁ、こいつ……お前達より先の技術力?どこから目線なんだい、それ?」