「――破っ!!」
「ぐふっ!?」
突如凄まじい衝撃に俺は吹き飛ばされ、置いてあったデスクの上を転がる。
馬鹿な。あの密着状態から打撃だと?
「震脚って知ってる?簡単に言うと足から力の波を色んな場所に伝える方法の一つなんだけどさ。それを使うとこんな事もできるんだ♪」
「――ライダ――パンチ!!」
「あー……うん、うん。悪くはないよ。ボクの元いた世界だったら武闘家レベル60とか?そんな感じ?」
突きと蹴りがことごとく宙を切る。完全にこちらの動きを読み切ったいなし方だ。
「悪くないんだけど……どうもお兄さんの動きには偏りがあるなぁ。まるで……そう……大きいものと戦うため専用みたいな形になっちゃってるね。
力ってのはね、身体の中心から出すのが基本なんだよ。腰。もっというとへその下あたりの丹田から全体へ。こう――柔らかく伝えるのがコツなんだ」
「!?」
転生鳴浪は右足を高々と上げ――驚くべき事に”足で”俺の拳を受け止めてみせた。
その身体が揺れ――いや、揺れているのは俺!?
「――ぐはっ!」
“足で”投げ飛ばされたのだと気づいたのは、床に転がってからだった。
「ちなみにボク、徒手格闘もレベルMAXまで極めてるんだよね。もちろん上限突破してるよ?」
「……その情報に興味はない」
「へーまだ頑張る気なんだ。でもボクはもう飽きちゃった。弱いんだもん」
傲慢とも言える薄い笑いを浮かべ、転生鳴浪は足で踏みつけてくる。
それを払いのけ……られない、だと?通常では考えられない重力が発生していた。
「ぐぅぅぅうううううっ!!!おおおおおっ!!」
「なんだ、そんなに立ちたいの?でもなー……もう飽きたしなー……あ、そうか」
ふっと重力がゆるむ。俺は身を起こすと、そのまま殴りかかる。
――が、その寸前、とてつもない力で壁に吹き飛ばされ、そのまま見えない力で壁に押さえつけられた。
動けない。身体が……壁にめり込んでいく。
「が……っ……」
「これも忘れてたよ。お兄さんのほうは……なんだっけ?力をその腰のベルトに封印されてるんだっけ?いいよ。それ、ボクが解除してあげる」
転生鳴浪は右手をこちらにかざすとさっきまでと違う言語で語り始めた。データとして記憶にある。アレは……かなり以前に人類が使用していたとされる言語のようだ。
「……あれ?解呪をかけたんだけど……効果無し……というか手応えすらないのか。その封印っていうの、確かにボクの知ってる魔法とは違う性質で施されているみたいだね」
「無駄、だ……お前達の技術力でこれに手を出す事は……でき、ない……」
「……はー……いっちいちカチーンとくるセリフ言うよね。なら……試してやろーじゃない。ボクに手を出せないものが……本当に……あ、る、の、か、を!!」
転生鳴浪の目が妖しく深紅に光る。そして――