「くふっふー!あっはははははは!!いいねいいね!!やっと――少しは戦いって感じになってきたかなー?」
転生鳴浪が右手を振ると、熱風は横にそれ――窓の外へと追いやられていった。
その表情に動揺は無い。やはり厄介な相手に違いは無いが……今のこの状態でなら、対抗できるかもしれない。
理由は分からないが父達の施した封印がゆるんでいる。
チャンスと捉えるべきだろう。
「転生してから全力出せる機会も無くなったし……やっぱりボクは退屈していたのかもね。心のどこかで……こんな展開を待っていた気がするよ!」
「私的な感情で力を振るう者は悪に堕ちやすい。俺がお前を……止める」
そして俺が足を踏み出そうとした時――
【……待って……】
その声が、またしても俺に届いた。
エコー?
そして……なぜだ?その声を聞いてから……足が……前に……動か、ない?
「う……ぐ……」
背後からうめき声。
モーリのようだった。
どうやら先ほどの攻防の煽りを受け足を負傷したらしい。
「モーリ。負傷したのか」
――顔を向け、そちらに身体を向けると――足は――自然に動いた。
「……だ、大丈夫だ……しかし……何か様子がおかしい……」
モーリはうずくまったまま、顔を上げ……視線を左右に泳がせる。
「何かとは……なんだ?」
「ちょっとちょっとーーっ!!ねえ!!盛り上がってるのはいいんだけどさーっ!!ついさっきのモニタリング、忘れてない!?」
部屋の片隅で四つん這いになったままの少女が叫んだ。
忘れてる……とは何を?
「地面に触れてるとめっちゃ手に伝わるんだけど!この地響き!大きくなってるの分かんない!?ほら!ここに今3人もモニターがいるって事は――」
「……ハンター……か」
そして、それは現れた。
転生鳴浪に吹き飛ばされたドアから、ぬっとその巨体を表す。
奇妙だ。その姿を直に見ても……なぜかハッキリとした輪郭を捉えられない。
この俺の目をもってしても。
「あらー……もう来ちゃったかー……ラスボスって設定みたいだし、君は最後に相手しようと思ってたんだけどなー」
転生鳴浪はしばらく首を傾げて考えるポーズをしていたが……やがて名案を思いついた顔でにっこりと笑った。