「なるほど用意周到だ。確かに危険そうな試練の場にマリは連れて行かなかったかもしれない。お二人に預ける展開もあったかもしれないねぇ……やれやれ」
って事は……あのヌマタという盲羅は、そもそも双子のいる場所については最初から知っていたって事か。
食えない野郎だ。
「え……じゃあ……おばさん達は上手くいかなかったら盲羅にお仕置きされるの……?」
不安げに言うマリにふっと笑ってノーラ夫人は「大丈夫さ」と言った。
「だってあんた方は思ったより狂暴で――銃を突きつけて無理やりここまで案内させたあげく、知ってる事を全部吐けってあたし達を脅してきたんだから」
「……え?」
「そういう話にするって事さ、マリ。
まぁ……それくらいのほうが納得はできます。
いきなり親切に全てお膳立てしてくれる夫婦が都合良く現れるよりはね」
「それにーー別に盲羅の言うことなんかきかなくてすむかもしれない」
ふっとヨッシーがそんな事を言った。
「あ……なるほど。さっきのモニタリング、か」と、私が言うとヨッシーが頷く。
【え?】
不思議そうな顔をする一同に説明した。
「実は知り合い……みたいな人に魔法使いがいてね。イグラムールに噛まれた人の毒を解毒させるのを見たんだよ。
しかし……とは言え、なかなか凄い事を言い出すなヨッシー」
「……分かんないけど……もしかしたら……こたつが何とかしてくれる……とかは流石に無理ゲー……かな……?」
あの様子じゃ、そもそも近づくのさえ危険そう……ってのは、口に出しちゃいけないな。
今の状況もあの魔法使いの子は聞いてるんだろうし。
「ま……なんだっていいさ。あたし達はあんたらに大して期待しないし、あんたらもあたし達の事を信用しなくていい
なんせーーウユとララ次第じゃあんたらと会うのはこれが最後ななるんだからね」
なかなか怖い事をおっしゃる。
「でもーー」と、ヨッシーが不審そうな声を上げた。
「そこはよく分かんないな。
盲羅も教授達も。
場所がここって分かってたなら……なんで自分達で入らないんだ?」
「はい……入ろうとしたしたさ。何度も何度も。しかしかしその度に声に言わ言われたのだ。『誰も連れてきていない』と、そうそう言われ言われーー」
『そうーーあなた方は誰も連れてこなかったーー』
その時、どこからともなく不思議な声が聞こえた。
静かな……女性……?の声。
一人のような、大勢のような、不思議な声だった。
【わ……声……だけ?誰もいない……よね?】
レコードの言うとおり、眼前には巨大な鏡があるだけで誰もいないように見える。
鏡の中から聞こえてきてるのか?