【す……すご……凄すぎ……じゃない?】
同感だ。
目を閉じたままヨッシーは両手に銃をかまえ、舞うように身をよじりながら次々と正確無比な射撃で敵を駆逐していく。
まるで舞うように。
銃を捨てながら次々と分身達の銃を奪っていく。
そうか。ヨッシーの銃はリボルバータイプ。
6発か?おそらくその数を撃つとしばらく撃てなくなるのだろう。
それすら全て計算し尽くしている動き。
倒していく分身を渡り歩き、絶え間なく銃を撃ち続けていく。
「は……誰が特別じゃないって……?」
その圧倒的な光景を見ながら、背筋を走る戦慄とともにそう呟いた。
「君は充分に……特別だよ。いやはや」
戦場を駆け抜けているのは、まさに無敵の英雄。
圧倒的な戦力差を現実離れした技で覆していく。神話のように。
【……本当に……やっちゃった……。動画上げてたら絶対バズったよ、これ】
そして広間は静けさを取り戻す。
額から汗を流し、荒い息を吐きながら……勝者は一人、制圧された戦場に立ち尽くしていた。
「なるほど……確かにアトレーユ……か……」
「ん?」
首を傾げたマリに私は説明した。
「いや、かなり有名な物語で活躍する勇者の名前がアトレーユだったなって思い出したのさ。古い物語だし、内容は忘れちまったけどね」
「ヨッシー、そのアトレーユより強いかもね!」
「はは、まったくだ」
「相手が……自分……だからだよ……。射撃が正確な分……読みやすかった……」
苦しそうに息を吐きながらヨッシーが言う。
なるほど。確かに初心者が撃ってくるより、狙いが分かる相手のほうが読みやすくはあるのかもしれない。だが……
「いやいや――それにしたって、大したものさ。そう思わないかい?ウユさんララさん!」
鏡から生まれた分身達が地面に溶けるように消えていく。
これで充分すぎるほど試練とやらはこなせたはずだ。
はたして広間に、その言葉が響き渡った。
『あなた方は試練を終えました。――私達は道を示します』
「わ……」
マリが両手で口をおさえて感嘆の声をあげる。
鏡が割れてむき出しの壁だった部分が……光り輝く……やがて、そこには大きな2つの扉が現れた。
……ん?なんで2つなんだ?