アラタのパンチが勢いよく鏡に突き刺さる!
パキン……と澄んだ音をたてて鏡にヒビが入り……そしてあっけなく鏡の壁は粉々に崩れ落ちた。
「マ……マジ?……や……っ……た?」
「ふっ……試練なんて、殴ればたいていクリアできるのだよ」
「わー!アラタすごーーい!!」
歓声をあげてマリが飛び跳ねる。
が……その時、にゅっと鏡の破片から《俺》の手が生え、そして……ずるり、と全身が鏡から出てきた。
い、いや……それだけじゃない。なんだこれ……辺りに散らばった鏡の破片達から……それぞれに……無数の俺達が出てくる……!!!
「……わぁあああああ!!か、隠れろぉおおおお!!!」
俺は叫び、マリを突き飛ばすようにして近くの岩陰に2人で転がり込む。
間髪入れずに銃から放たれたいくつもの光線が走った。
「うひぃえええっ!!ちょ、ちょっと待ってくれまいか!わっ!わわっ!」
遅れて少し離れた岩陰にアラタが命からがらといった感じで飛びこむ。
「わー!ちょっと、ちょっと!話が違うよー!アラター!?」
「さっき言ったろう?マリ。期待はたんなる勘違いだったりもするのさ」
「めちゃくちゃ悪化したじゃねーか!!」
「あーいや本当にすまん。
拳で解決できないレアなケースだったらしい。
しかし……こりゃどうしたもんかねぇ……」
くそ、言い争ってる場合じゃない。
100緊急100絶対絶命。
飛んで来る光線はさらに雨のように激しさを増した。
「こ、これ……ヤバいよ……マリ達……死んじゃう……」
無数の「自分達」が襲ってくる……なんて……
だって単純計算で分身ってだけで互角なんだろ?それが何十倍って……
こんな絶望的な戦力差……試練どころかどうしようも……
いや……本当に……?
『それを求めている者が誰もいなかったとしても。いえ、おそらくは求められているのでしょうね。今は気づけないだけで』
ーー本当にどうしようもないのか?
その時、俺の頭の中に何度か見た『ある光景』がよぎった。
待てよ……待て、待て……俺……いったい何を考えてる?
そんな馬鹿な……こと……。
「ど、どうしたヨッシー?なんでそんなに震えてる?なんか……目つきが尋常じゃないぞ?
一体どうしたんだい?」