【その手の説教は聞き飽きたよ。それに満足なんかがほしいわけじゃない。この世には……存在しちゃいけない奴らがいる……。そいつらがいなくなるなら手段はどうでもいい。僕の事すらどうでもいい】
「いや、それは――」
「羨ましいな」
【――え――?】
俺が口にした一言で二人は会話をやめた。
「あ……なんかごめん。つい思ったもんだから……」
【羨ましいって……何がだよ】
「いや……それだけハッキリ言えるって事は……そいつの事を100嫌いなんだって……確定してるって事だろう?」
【……何をわけわかんない事言ってるんだ。相変わらず気持ち悪いな。そんなの当たり前だろ。そう思ってなかったら、そもそも死んでほしいなんて思うかよ】
「俺は分からないんだ」
【はぁ?なんでだよ】
「俺は自分の事すらよく分からない。何に怯えて、なぜ周りと上手くやれないのかも。だから……もしかしたら……悪いのは……死ぬべきなのは……自分なんじゃないかって……時々そんな事も思ったりするんだ」
【……なんだよそれ。そんなの――】
ボイスは何かを言いかけ、そしてやめたようだった。
【ちっ。なんで僕はこいつらとこんな話してるんだ。何の意味もないのに】
「そうかい?私はなかなか興味深かったよ。またの機会にぜひお願いしたいね」
【…………】
その時――ガクン!と一際大きい揺れが起きて――部屋の振動が止まった。
「う……着いた……のか?」
「どうやらそのようだね。マリ、大丈夫か?」
「ダメぇ……キモチワルイ……うぇぇ……」
頭がふらふらする。
なんとか部屋の外に出ると……そこには巨大な通路と……うず高く積まれたゴミの山があった。
この街の廃棄場って話だったが……なんだか……不気味な人形や爆弾らしきものまで無造作に転がっている。
ゴミ出しに細かな分別が求められる現代社会では許されない状況だ。
「うーん……下手したら有毒ガスの発生まであり得るなこりゃ。確かにこんな場所に好んで来る奴はいないか。あまりここの空気を吸いすぎないほうがいい。布でなるべく口元をおさえて先を急ごう」
そう言いながらアラタはマリに背中に乗るように言って、しゃがみこんだ。
「え……いいよ、アラタ……マリ頑張るし……」
「なーに私の都合さ。たまに筋トレもしないと身体がなまるんでね。マリくらいだったら軽すぎて足りないくらいさ」
……なんというか……モテるんだろうな、この人。
「コミュ力って大事だよな……」
【……くだらない】
アラタみたいに振る舞う事もできない。ボイスみたいに振り切った事も言えない。