『あなた方は選択する事ができます。真実へと続く扉を開き……あなた方が疑問に思っている全て……この世界の全ての真実を知るのか。おひかりを持っている者が触れるなら、その扉は開くでしょう』
右側の扉がぼうっ……と淡く光り、プレートに《真実》という文字が浮かび上がる。
『あるいは……知ろうとしない、事もできる』
今度は左側の扉が淡く光る。そこには《出口》と書かれているようだった。
「……ん……何言ってんだか……ここまで来て知らずに帰るだなんてするわけないよなぁ」
私が頭をガシガシかきながら言うとマリは大きく頷く。が……なぜかその横でヨッシーは浮かない顔をしていた。
「知って……いいのかな……?」
「え?なんだいそりゃヨッシー」
「い、いや……なんか俺……なんだろう……なんか……行きたくない感じがするというか……」
「おいおいおいどうしたんだ?せっかく苦労してここまで来たっていうのに?」
「そ……そうなんだけど……世界の全て……って言葉が出てから……なんかよくわかんないんだけど……怖い……っていうか……」
ひどく青い顔をしてヨッシーは言う。
「世界の全て……?んー……別にそんな大層なものじゃないと私は思うけどねぇ。このよく分からん世界の仕組みとか担当者とか名乗ってる彼らの事とか?そういった事が分かるんだろう?」
私のその声にウユララは反応した。
『はい。それらの内容は知る事ができるでしょう。そして、それ以外の全ても』
「そりゃありがたいね」
『……ですが、どうやら選ぶ時間はあまり無いようです』
「は?次から次になんだい?」
『この世界の魔力が全て……ある場所に集められています。強制的に。私達のような……声だけの不確かな存在は、間もなく形を保つ事さえできなくなるでしょう』
声だけ?いまだに姿をあらわさないし、えらくもったいぶってやがるなとか思っていたけど……いや、それよりも……。
「えーと……魔力が集められているとかいうのは……この世界の崩壊となんか関係してるイベントなのかい?」
『違います。世界の崩壊は物語の衰退や氾濫による必然。全ての次元、全ての者に訪れるただの事象。
これは転生鳴浪という人物が行なっている魔法によって引き起こされている現象です』
「……はぁ?テンショウナナミ!?」
ヨッシーが驚きの声をあげる。
前半も意味不明だったが、後半のインパクトが勝っていた。
『この付近全ての魔力をかき集め、強力な魔法を使おうとしているようです。それが発動すれば、おそらくこの都市に今いる全ての生命は消滅するでしょう』
「……ハンターへのリベンジ……って事か……おいおい……」
――時間がありません、と再度ウユララに告げられ、私はみんなを振り返った。
「私はもちろん真実へのドアを開けるべきだと思う。たぶんハンターの倒し方もそれで分かるし、それでこの行事は全て終わるんだろ?魔法使いちゃんが何かやらかす前に。それでみんなが助かるだろうしね。どうだい?」
「うん、いいよ!マリも一緒に行くよ!」
【そりゃ、ここまで来たらそっちに行ってもらわないと納得できないよね】